外に移動するとライラは肌寒さにわずかに身震いした。アルント王国はどうも秋が短い。暑さに眉をひそめていたのがつい最近の出来事のようだ。

 なんとか馬に乗れるようになったとはいえ、さすがにライラひとりで馬に乗せるわけにもいかず、ライラはセシリアの馬に相乗りすることになった。

 彼女の馬は栗毛色で四肢や顔など所々白色になっている。セシリアは軽い身のこなしで馬に乗り、ライラは彼女のうしろに跨った。

 独特の馬のごつごつした感触や温もりを感じ、セシリアの細い腰におずおずと腕を回した。

「遠慮なく掴まってくださいね。少し気性の荒いところのある馬ですが、ゆっくり行きますから」

「すみません、よろしくお願いします」

「さあ行こうか」

 ルディガーの合図で馬はおもむろに動き始めた。街へ行くのはいつぶりだろうかとライラは記憶を辿る。

 ファーガンの家に行く前、孤児院にいた頃も、ライラはあまり外出を好まなかった。けれど今はお目当てのものがある。だから気持ちは自然と期待に満ちていた。

 山を下り夜警団の屯所に馬を預け、三人は徒歩で中心地を目指す。来たる冬の備えようと広場では市が並び賑わっていた。

 南部地方から運ばれてきた色とりどりのフルーツは見た目や香りで人々を楽しませ、肉を干したもの、魚の瓶詰めなど保存食も多かった。

 王都では雪が降ることは滅多にないが、冬の間食糧不足になるのはどうしたって避けられない。