外気に身を晒され女は反射的に身震いした。外套もなくどう見ても薄着の彼女にスヴェンは自分のマントをはずし、背中から包むようにかけてやる。
「ありがとう、ございます」
「名前は?」
「……ライラ、と申します」
間髪入れない質問に女はうつむき気味に答えた。下手に目を合わせないようにするのは癖なのだろう。
ちらりと館の方に視線を移したのを見て、スヴェンは遮るようにライラの肩を抱いた。
「わっ」
次の瞬間、ライラは体が宙に浮くのを感じた。こんな声をあげるのは久しぶりだ。
スヴェンはライラを抱き上げると自分の愛馬に先に彼女を乗せ、続けて自分も鞍に跨る。
「あの」
「舌を噛みたくなかったら口を閉じてろ」
冷たい言葉にライラは黙り込む。馬はゆっくりと動き出し、お世辞にも心地いいとはいいづらい振動が伝わってくる。
アルノー夜警団――。
ちらりと密着する男の服についている印に目をやった。
黒の盾(エスカッシャン)に赤の十字(クロス)。中央部にはこの国の誰もが知っている王家の象徴、双頭の鷲が描かれている。アルノー夜警団の団章だ。
王国の成り立ちには、初代王の存在と共にもうひとりの人物が語り継がれている。初代王に多くの助言を与え、王国の発展に大きく寄与した女性がいる。
人々は彼女を“偉大なる指導者”の意として『フューリエン』と呼んだ。
彼女に関して謎は多い。『あどけない少女だった』『絶世の美女だった』『老婆の姿をした魔女だった』など、その外見ははっきりしない。
「ありがとう、ございます」
「名前は?」
「……ライラ、と申します」
間髪入れない質問に女はうつむき気味に答えた。下手に目を合わせないようにするのは癖なのだろう。
ちらりと館の方に視線を移したのを見て、スヴェンは遮るようにライラの肩を抱いた。
「わっ」
次の瞬間、ライラは体が宙に浮くのを感じた。こんな声をあげるのは久しぶりだ。
スヴェンはライラを抱き上げると自分の愛馬に先に彼女を乗せ、続けて自分も鞍に跨る。
「あの」
「舌を噛みたくなかったら口を閉じてろ」
冷たい言葉にライラは黙り込む。馬はゆっくりと動き出し、お世辞にも心地いいとはいいづらい振動が伝わってくる。
アルノー夜警団――。
ちらりと密着する男の服についている印に目をやった。
黒の盾(エスカッシャン)に赤の十字(クロス)。中央部にはこの国の誰もが知っている王家の象徴、双頭の鷲が描かれている。アルノー夜警団の団章だ。
王国の成り立ちには、初代王の存在と共にもうひとりの人物が語り継がれている。初代王に多くの助言を与え、王国の発展に大きく寄与した女性がいる。
人々は彼女を“偉大なる指導者”の意として『フューリエン』と呼んだ。
彼女に関して謎は多い。『あどけない少女だった』『絶世の美女だった』『老婆の姿をした魔女だった』など、その外見ははっきりしない。


