はらり
桜の花弁が一枚、窓辺におちた
何気なく手にとって見る
それは、ひどく柔らかで綺麗な薄紅色をしていた

私が、桜の花弁に見惚れていると
「なにしてんの?」
背後から低い声がした

私に話しかける人などこのクラスにはいないので、思わず身体が強張ってしまう 

「桜、みてた。」
目を逸らしながら言うと、花咲、と男子にしては綺麗な字が飛び込んできた

花咲 海斗
無口でクールでかっこいいランキング(?)第一位のひと

ぼっちではないけれど、一匹狼という感じがしている人だ

私が、花咲君の人物像を思い浮かべていると

「嘘つき」

…とびっくりするような冷たい声が聞こえてきて
思わず顔を上げた

「お前、桜の木なんてみてなかっただろ?
桜の…なんてんだっけ…それ」


「…花弁」

そういうことか、と納得しながら
私がぼそっと言うと、

「そう!それだ!!」
…子供みたいに彼は顔を輝かせた