【完】キミさえいれば、なにもいらない。

「でも、顔にクマできてる」


私が疑うような顔で指摘すると、ドキッとしたような顔をする彼。


「ははっ、気のせいだろ」


なんて、はぐらかされてしまったけれど、その顔は絶対無理してるんだろうなと思った。


そんな彼を見ていたら、つい世話焼きな性格が出てしまう。


「あの、勉強頑張るのはいいけど、ちゃんと睡眠も取ってね。体調崩したらテスト受けられないよ」


そっと彼の腕に手をかけ、忠告するようにそう告げたら、彼方くんは目を見開いて、ちょっと照れたような顔をする。


それから上目遣いで私の顔をじっと覗き込んできた。


「それは、俺のこと、心配してくれてるの?」


「えっ……。いや、うん。まぁ……」


否定するわけにもいかなくて、私が小声で頷いたら、彼方くんはクスッと嬉しそうに笑う。


「雪菜のそういうとこ、好き」


「なっ……」


相変わらずストレートな彼の発言に、思わず心臓がドキンと跳ねた。


どうしてそういうことをサラッと言えてしまうんだろう。


「そ、それより、教えてほしいところあるんでしょ。早く勉強しようよ」


照れくさい気持ちを隠すように彼に背を向け、カバンを持って歩き出す私。


そのまま私と彼方くんは、一緒に図書室へと向かった。