「うちは……名目上は暴走族だが、他とは違うからな。法律に引っかかるようなことは一切禁じてるし、最低限度の一般常識や教養を身につけるために学校も通うぞ」
「え……」
「金銭面でどうしても通えないやつは、代わりに働く決まりだ。それが出来なきゃ、胡蝶蘭のメンバーにはなれない。ただの甘えん坊がここに来る必要はないだろう?」
櫂さんの声のトーンは変わらないけれど、現実を強く孕んでいて厳しい。
切れ長の瞳が物憂げに窓の外へ向けられる。
「……"今はここにいられても、いずれは誰しも巣立つ時がくる。その時に、たとえ自分ひとりでも生きていけるような力を身につけておかなきゃ意味がない"──という、大翔さんの方針なんだ」
「大翔、さん」
私を助けてくれた、初代総長。
身体も心も大きくて、とてつもない強さを持った人だったけれど、どこか底が読めない人だったことを思い出す。
「おかげで、うちを巣立っていったヤツらはそこらの人間よりもまともだったりする。ここでは必然的に上下関係を学ぶし、日常的に抗争の中にいれば心身共に強くなるからな。人間ってものを、色んな角度から捉えやすいのさ」
苦笑する櫂さんの視線の先には、壁に大きく貼られた『働かざる者食うべからず!』という文字。
やたら達筆に書かれたその言葉は、暴走族のイメージとは真逆のものだ。



