「起きたのか」


「あの、はい。すみません、寝坊して……」


「別に起きる時間が決まってるわけじゃないからな。ここにいる間は、何にも縛られず好きなようにいたらいい」



何にも縛られず、好きなように……。


その含みのある言い方に、もしかして櫂さんは私のことを知っているのではないかと思う。


実際に櫂さんは胡蝶蘭一のベテランで、参謀という役職的にも情報収集に長けているはずだ。


きっと私のことなんて、とっくに調べがついているのだろう。


いや、そもそも天馬の事情を知っているのなら、わざわざ調べる必要もないかもしれない。


まあ私がここへ来た目的が、そう簡単に外に漏れることはないはずだから、全ての事情を櫂さんが知っているとは思えないけど。


とはいえ──。



「それより、腹が減っただろう。朝飯温めておいてやるから、顔を洗ってきたらどうだ?」



この人は、やっぱり油断出来ない。