「……あぁぁ……私としたことが……」
長年住んだ家にいる時よりもぐっすり眠ってしまうなんて、なんて皮肉なんだろう。
久しぶりにスッキリしている頭を悩ませながらベッドを降りて、私は深いため息をついた。
「まぁ、今だって夢みたいなものだけど……」
暴走族の中に女ひとり飛び込んでいくなんて、我ながら無謀にもほどがある。
今になって考えれば、こうして怪我ひとつなく無事でいられることが不思議なくらい。
男のむしろに泊まっちゃったし。
……びっくりするほど乙女チックな部屋を貸されるなんて思っても見なかったし。
「まぁ天馬にも会えたから、結果オーライ……かな。第一計画は成功してるもんね。予定外だけど」
ぼそぼそと独りごちりながら、ワンピースタイプの寝間着から持参のロングニットに着替える。
素足ではさすがに寒いのでタイツを履き、惰眠をむさぼりすぎたベッドを綺麗に整えてから部屋を出た。