「なんなの、もう……ほんとどうなってるの」
呆然と起き上がりながら、私は額を押さえる。
一日で二度も人に投げられるなんて、たとえ夢でも信じたくない。
「梶谷、理月──あんた、いい加減にしなさいよ! 人のことなんだと思っ」
てるのよ、と続かなかったのは。
……口もとに不敵な笑みをたたえた理月が、私の唇にむにっと人差し指を押し当ててきたから。
「命が惜しくばそれ以上喋んじゃねえ。曲がりなりにもここは族のアジト──危険な場所にいるってこと忘れんなよ」
「んむっ……」
「ま、その度胸だけは認めてやるけどな」
なんでこの人、こんなに偉そうなんだろう!?
いや、実際に偉いのは間違いないけれど、それにしたって上から目線が過ぎないだろうか。
私のこと完全に物かなにかだと思ってるよね?



