複雑に入り交じる思いを隠すように唇をきゅっと引き結びながら、二階の廊下に降り立つ。
先を歩く風汰先輩が部屋の扉を開けると、場にそぐわないにぎやかな声が流れてきた。
「あっ風汰、桐乃ちゃん起き……てるじゃないの〜!」
「っ──!?」
「やだ、やっぱり可愛いわっ! ちょっとアタシに愛でさせて〜っ! やーんお肌すべすべもちもち〜っ」
風汰先輩を押しのけて抱きついてきたその人は、全身を硬直させながら棒立ちする私に頬ずりしてくる。
な、なんなのこの人!?
はげしく困惑しながらも、視界の端に揺れるシルクのような美しい銀髪には見覚えがあった。
そう……気絶する前、最後の記憶。
「ちょ、離っ……」
ていうかこの人、力強すぎ……っ!



