「なるべく住み心地が良いようにって、本人は思ってるみたいだけどね」
「あの、じゃあ胡蝶蘭のメンバーはみんなここで寝泊まりしてるんですか?」
「全員じゃないよ。俺たち幹部はみんなここに住んでるけど、ガキはよっぽどな理由がない限り帰らせるようにしてるから」
階段を降りながら説明してくれる風汰先輩は、誇らしげながらどこか寂しそうにも見えた。
よっぽどな理由、か。
ここに来てから耳にする『ワケあり』という言葉は、その言葉以上のものを含んでいるんだろうなとは思っていたけれど。
「なんか想像してた場所とは、全然違う……」
「そうだよね。俺もここへ来た時、同じこと思ったからよく分かるよ」
他ならぬ天馬だって……。
そう、あの子もワケありには違いないんだから。
ここが帰る家なら、天馬にとってもここのみんなは家族同然なんだろう。



