「普段から、ああいうことをする奴ではないんだけどね。よっぽど桐乃ちゃんの事が気に入ったのかな」 「……それはたぶん、違うと思いますけど」 あの人はただ、私の反応が珍しくて面白がっていただけだから。 いま思い出しても腹が立ってくる。 あんなに感情的になったのは私も久しぶりだ。 暴走族の総長なんて得体の知れない奴に噛みつくほど、意外にも肝が据わっていた自分にはびっくりだけど。 「まあそれは置いといて」 ふくれる私に苦笑しながら、忍崎さんはよっこらせと立ち上がった。