「っ……ん……」
私も理月も大人になった今、あの頃とはまた少し考え方も覚悟も変わっているけれど。
──それでもきっと、変わらないものも確かにある。
「お前にこれ、やるよ」
唇が離れたあと少しの余韻をおいて、理月が傍らに置いていた花束を差し出してきた。
「これ……」
「胡蝶蘭。俺たちのはじまりの花だろ」
溢れんばかりに詰め込まれたピンク色の胡蝶蘭の花束。
ふんわりと甘い香りを放ちながら、照れるように丸みを帯びて咲いている。
「うん……大事な花だね。ありがとう、理月」
──ピンク色の胡蝶蘭の花言葉。
「あなたを愛しています、か。照れるなぁ」
「……わざわざ言わなくていい」
「だって嬉しいもん。私も、理月のこと愛してるよ」
「……お前、昔からそーいうことサラッと言うよな」
気持ちは伝えられるときに伝えないと意味がない。
いつどうなるかなんて……誰にも分からないんだから。



