◇
「……なんで」
縁談用の着慣れない和服でお見合い場の食事処へ向かった私は、部屋に足を踏み入れた瞬間。
持っていた手さげ鞄を、床へ落とした。
震えた声が自分のものだと気づくよりも前に、ツー……と涙が頬を伝ってこぼれ落ちる。
畳が敷きつめられた和室は貸し切りで、私と彼以外ここには誰もいない。
窓から外を眺めていた彼がゆっくりと振り返り、ふっと可笑しそうに笑った。
「再会そうそう泣くなよ、チビ助」
「──理月……っ!」
化粧が取れるだとか、服が乱れるだとか、もうそんなことはどうでもよかった。
気づいた時には、理月の胸の中に飛び込んでいた。
懐かしい理月の匂いが鼻腔をくすぐって、ああ理月だと改めて思ったら、なおのこと涙が溢れてくる。



