「……へ? お見合い?」
資料を確認していた手が止まる。
思わず素っ頓狂な声を出して、私はお父さんを凝視した。
「桐乃が小さい頃から話を持ちかけられている縁談だ。今となっては別にする必要もないんだが……その」
「し、しないよ? お見合いとか絶対」
「いや、しかしな」
しなくてもいいと言っておきながら、ずいぶん歯切れが悪い。
だいたい椿財閥の形態を守るために、私自ら『後継ぎ』になるべくこうして父の下で働き始めているのに、今そんな無意味なことをして何になると言うんだろう。
「もうすぐ大学も卒業するし、私には……」
私には、待っている人がいるのだ。
四年もの間、首を長くして待ち続けている相手が。



