嘘つきお嬢様は、愛を希う



赤髪といえば、私にはもう先ほど絡んできたろくでなしヤンキーのイメージしかない。


まさか弟まで赤に飲まれているなんて……。


期せずして訪れたショックに絶句してしまう。


何も答えない姉にさらに混乱したらしい天馬は、こちらに駆け寄ってくるなり、思いきり私の肩を掴んだ。


ぐいっと、天馬の指先が肩に食い込む。



「いっ……!」



その時だった。



「──おいコラ」



思わず声を上げた私を覆いかぶすように。


まるで空気を超越するような凛とした声がひとつ、長い廊下に響きわたる。


誰?


と思った次の瞬間には、何者かに突き飛ばされた天馬が弧を描きながら宙を飛んでいた。


私の肩を掴んでいた手が離れ、反動で体が後ろにぐらりと大きく傾く。