嘘つきお嬢様は、愛を希う



途端にシン──とした部屋の中に、一瞬沈黙が落ちる。


先に口を開いたのは、天馬だった。



「……親父、あんなに白髪多かったか?」


「え、そこ?」


「いや、今ふと思ってさ」


「まぁ確かに……うん。お母さんが死んじゃってから、一気に増えたかもしれないね」



人間というのは、とことん難しい。


小さなすれ違いが何重にも重なって大きな穴を作り、長いこと私たち家族をばらばらにしていたんだろう。


母もいない今となっては、それを完璧に埋めることなんてきっと出来やしない。


それでも内に溜め込んでいたものを声に出して伝えることで、ほんの少し……変わることもあるのかも、なんて。