「良い顔だ。……そう、困難を乗り越えなければわからないことがあるとわたしも分かっていたはずなんだが……。どうにも甘やかしてしまっていかんな」
さてと、とお父さんは私たちに向き直った。
「続きはまた退院してからにしよう。あまり長々と話していたら体の負担になる」
「あ……う、うん」
「とりあえずお前たちが無事で良かった。……天馬」
ビクッ、と天馬が体を揺らしてお父さんを見る。
「お前はまだ高校一年生だ。人生を決めるのはまだ早い。今は生きたいように生きなさい」
「生き、たいように……」
「ただし、全ては自己責任だぞ。大人も子どもも自分の行動には常に責任を持たなきゃいかん。その上で自分が正しいと思うこと、正しいと思う道を進めばいい。……わたしのように、幾多の失敗をしても結局それしか道はないからな」
ぽかんとしている私たちの頭を撫でて、お父さんは時計を確認しながら病室を出ていった。



