不幸せだった、
なんてきっとお母さんは言わないけれど。
それでも外の世界の自由を知っているお母さんにとっては、とても窮屈な生活だったに違いない。
だからこそ、私たちを連れ出したんだ。
──なんのしがらみもない、外の世界へ。
「……母さんが限界だって言い出すまで、わたしはそのことにすら気づいていなかったよ」
「じゃあ、離婚するって言い出したのはお母さんの方なんだ?」
「ああ。無論、離婚を承諾したあとも金銭面の援助はするつもりだったが……断られてな。問答無用で送っても、必ず送り返されてきた。お前たちの頑固さは、間違いなく母さん似だろう」
初耳だったのか、天馬が驚いたように目を見開いた。
受け入れられない様子で首を横に振ると、答えを求めてこちらに視線を向けてきた。



