「……そもそも母さんが不倫したのはわたしのせいだ」
お父さんは小さく微笑を浮かべながら首を横に振る。
「仕事にかまけて、家事も育児も全て母さんに任せっきりだった。生まれて間もない桐乃の世話も、天馬の妊娠がわかった時も、わたしは仕事を優先した。
……そもそも、その時点で天馬がわたしの子ではないということくらい分かっていたんだよ」
「えっ……」
「そりゃあそうだろう。身に覚えがないからな。それでも、わたしは天馬を産ませた。離婚もしなかった。母さんが望んだから……というのもあるが、わたしも母さんを失いたくはなかったからな」
不意に、もしかして、と思う。
「……最初から天馬の血が繋がってないことを知ってるのに、今更お母さんと離婚したのは……お母さんを自由にしてあげたかったから?」
お父さんの目が見開かれる。
どうしてそれを、と揺れる瞳が全ての真実を伝えていた。



