……でも、ここでビビっちゃだめだ。
勝負は、いつだって相手に心を見透かされた方が負けるものだから。
「…………」
まっすぐに雅さんの奥に立つ櫂さんを見つめ、今にも緊張で途切れそうな息を整える。
対抗してきた私に興味を持ったのか、櫂さんが「ほう」と面白そうに片眉をあげた。
ほら、この表情……。
何となく、あの人に似た雰囲気を持っているような気がするのはきっと気のせいじゃない。
「私は椿桐乃と申します。弟の……」
「っ、桐姉!?」
スイッチの入りかけた私の言葉を遮って、廊下に聞き覚えのある声が響きわたる。



