「おいで。心配しなくても、胡蝶蘭は女子供に手を出したりはしないから」
「っ……」
私が不安を覚えていることに気づいているのか、さっきよりも心なしか声音が柔らかい。
雅さんの放つ不思議な雰囲気に飲まれながらも、言われたとおりに後に続く。
扉のむこうは長い廊下になっていた。
思わず足が泊まったのは、入ってすぐの部屋の前で壁に寄りかかった男の人が目に入ったから。
手に持ったノートパソコン、四角い黒縁メガネ。
いかにも真面目で堅物そうな彼がこちらへ顔を向けた瞬間、全身が凍ったように動かなくなる。
なに、この威圧……っ!



