嘘つきお嬢様は、愛を希う



「大丈夫……怖く、ありません」


「へえ?」


「私にとってはもっと怖いものがあるし。それに、知らないから怖いと思うだけです。たいていのことは知れば怖くなくなるものでしょ」



これまでずっと、そうやって生きてきた。


あの人の口癖──口先だけで行動に起こさない人間にはなるなという言葉に乗せられて。


教訓にはなっているのかもしれない。


けれど、この状況で自分の口からそれが出てくることには嫌悪しか覚えないのだから、呆れるほど始末に負えない。


自嘲気味に微笑んだ私をちらりと横目で見て、雅さんは「そう」と、ことも無さげに返事をした。