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「……ちゃん? 桐乃ちゃん?」
「あ、え?」
「大丈夫? ぼーっとしてるけど」
いつの間にか、箸が止まっていたらしい。
目の前に座る風汰先輩がやたら心配そうな顔をしていて、私は慌てて取り繕う。
「だ、大丈夫です。ちょっとお腹いっぱいで」
とはいいつつ、いつものように風汰先輩が作ってくれた野菜たっぷりポトフは少しも減っていない。
どうしても食欲がわかなかった。
「……あの、ごめんなさい。今日はもう上にあがるね」
「ちょ、桐姉……っ?」
「心配しないで、ちょっと眠いだけだから」
腰を浮かせた天馬に笑ってみせて、私はポトフの入ったお皿をキッチンに運びラップを施した。



