だからこそ、あの瞬間を見た時私は不覚にも『この人は信頼出来る』と思ってしまったのだ。
……そう、それは私が天馬を連れ戻さない決断をした理由の一つでもある。
理月がそばにいるなら天馬もきっと大丈夫だ──。
認めたくはないけれど、そんなことを思えるくらいには、私は理月を信じてしまっているらしい。
小さく息を吐き出しながら、私は頭をもたげて空を見上げた。
うっすらとした灰色の雲が張り巡らされた夕暮れ時の空は、何色とも形容し難くてホッとする。
……こんなふうに、形のないものが良い。
曖昧であれば曖昧であるほど、現実を見なくて済む。
突きつけられたらもう逃げられはしないんだ。
世界はいつだって、私の首筋に鋭い刃をあてて息を潜めている。



