さきほどの出来事が夢だったのかと思う程度には、こうして話しているふたりは色々な意味で『普通の人』だ。
暴走族と関わっているということ自体が、ちょっと信じられなくなるくらいに。
それからふたりは、私に聞こえないよう小声でなにかやり取りをした。
思わず警戒しそうになるけれど、大翔さんはとくに何をしてくるでもなく、もう一度私に「じゃあな」と声をかけて行ってしまった。
「……まったく、忙しない人だよね」
「えっ?」
「あの人。やることなすこと突拍子もないのは昔からだけど、そろそろ落ち着いてくれないかな」
疲れ気味にそう言って歩き出した雅さんに、私は慌てて付いていく。



