「もはや、なんの話をしていたのかも分からなくなってるけどね。兎にも角にも、今回の件で『スパイ』がいることはわかったんだ。学校だしメンバーじゃない可能性もあるけど、とりあえずはそいつの洗い出しからかな」
いつものようにサラッとまとめてしまった風汰は、悩ましげに腕を組む。
「まぁ、あの時間帯に理月と桐乃ちゃんの動向を監視して指示出来るやつとなれば、ずいぶん限られてくるからね。特定にはそんなに時間はかからないだろうけど」
「うわー、身内にスパイがいるとか考えたくもない……」
「そんなこと言ってもね、天馬。時にはそういうことも有りうるのがこの世界だよ。心を鬼にして徹底的に洗い出さないとさ」
こんな時でも柔和な笑みを崩さない風汰に底知れぬものを感じたのか、天馬の顔がひくっと引きつった。



