「俺が総長を降りたのはそのためだ」
そんな人が出逢った、ただ一人の相手。
……孤独な悪魔を包み込む、唯一の天使。
「俺はサリを守る。サリのためならなんだって捨ててやる。たとえ胡蝶蘭でさえ敵に回ればぶっ潰す覚悟もあった。だからこそ、総長にはふさわしくねえと自らピリオドを打ったんだ。……そう易々と壊してくれるなよ」
「はっ、あんたの事情なんて知るか」
咄嗟に。
……ほぼ反射的に、そう返していた。
「もともと俺はそんなに律儀じゃねえ。利用できるもんは何でも使う主義だからな。もしあいつを守るために必要なら、胡蝶蘭だって例外じゃねえんだよ」
そうじゃなきゃ、なんのために総長になる必要がある。
強さだけがものを言うこの世界で、大切なもんを守るために『総長』という権力がどれほど盾になることか。



