◇ 「悪いな、送ってやれなくて。あとは雅に連れてってもらってくれ。そいつといる限りはもう危ない思いはしねえから安心しな」 大翔さんの車で胡蝶蘭のアジトの近くまで送ってもらった私と雅さん。 けれど降り立った場所は、人どころか車もほぼ走っていない閑散とした通りだった。 こんなところに暴走族の基地があるなんて想像もつかなくて、まさか騙されたのかと一抹の不安がよぎる。 とはいえ、もしも私を攫うつもりならわざわざこんな場所で降ろしたりしないだろうし、車内でのふたりの会話におかしな点はなかった。