「サリさんは……強いんですね」
思わず口をついて出た言葉にハッと口を押さえる。
けれどサリさんはとくに気にしない様子で頬を和らげた。
「───守られるだけの女にはならない」
「え?」
「それがあたしのモットーなの」
今も昔もね、と付け足しながら、サリさんは何気なく窓の外へと視線を向けた。
その端正な横顔にドキッとしてしまうのは、きっとサリさんが綺麗なだけじゃないだろう。
「強さっていうのは、なにも身体的なことだけじゃないの。身を守るって意味ではもちろん喧嘩は強い方が良いけど、それで守れるのはあくまで体だけだからね。心を守れなくちゃ意味が無い」
「心、ですか?」
「心が崩壊してしまったら、そこにあるのは絶望だけ。感情や欲に執着しなくなる。何もかもどうでも良くなって、自分が生を得ていることすら分からなくなる」
まるで体験したことのように言葉を紡ぐサリさんは、私に向き直るとどこか悲しそうにほんの少し首を傾けた。



