「うっ……く……」
「うん、泣いていいよ。怖くて当たり前じゃん。ここに来てからずっと我慢してたんだよね。頑張ったね」
やめて、そんな優しい言葉。
甘えられる場所なんて私にはないのに。
甘えてる時間なんて、残されてないのに。
「サリ、さんっ……私っ……」
「あたしがここに来た時もそうだったよ。常に気を張って虚勢を張って、舐められないようにしてた。……でも、いつの間にかそれが馬鹿らしくなってね」
懐かしむようにゆったりとした口調で語るサリさんは、私の頭を同じリズムで撫でながら小さく笑った。
「びっくりするくらい温かいから、つい忘れそうになっちゃったな」
「……なに、を?」
「現実。あの頃はね、希望なんてなかったの。今こうして生きてるけど、ここに来なければあたしの命は確実にもうこの世から消えてたから」
病気でね、と付け足したサリさんは、とんとんと自分の頭を小突いてみせた。
頭の……脳の、病気ってこと?



