「良かった、ちゃんと笑えてるね」
「え?」
「さっきまでガチゴチだったでしょ? ちょっと肩の力抜いてリラックスした方がいいよ」
言われてみれば、あの場から解放されて少し呼吸がしやすくなったように思う。
サリさんには全てお見通しだったのか、出会ったばかりなのにこの人には敵わないと察せざるを得ない。
「たぶん見当違いなこと思ってるだろうから言っておくけど……理月は桐乃ちゃんが部外者だから外に出したんじゃなくて、ただ気遣ってるだけだからね」
「え?」
「あたしを呼んだのも全部桐乃ちゃんのためってこと。怖い思いをしたばっかりなのに、ここには男しかいないからね。……怖かったでしょ?」
ストン、とソファに座らされて。
サリさんにふわりと頭を撫でられたその瞬間、自分でも思ってもみなかった涙が溢れてきた。
「……っ、怖くなんか、」
「大丈夫。別に、強がらなくても良いんだよ。ここにはあたししかいないから」
鼓膜を優しく揺すぶるサリさんの声は、がちごちに硬直していた筋肉や心もろとも溶かしていくようで。
泣いちゃダメだと思っても、止まる気配のない涙の雫は次から次へと頬を伝い続ける。



