「サリ」


「あ、櫂だ。久しぶり?」


「なんでさっきから疑問形なんだ。それより珍しいな、こっちに顔を出すなんて」



状況を読み込めない私たちの横を通り過ぎ、ほうけている天馬の代わりに雅さんとその人を受け入れる櫂さん。


サリと呼ばれたその人は、仲睦まじげに櫂さんと話しながら不意にこちらを向いた。



「あ、あなたが噂の子ね」


「えっ!?」



う、噂のって……。


どう答えたら良いかわからずあたふたする私の前にすっと進み出たのは理月だった。



「雅さん、わざわざすみません」



珍しく礼儀正しく雅さんに謝る姿にぎょっとする。


けれど、それ以上に驚いたのは。



「……お久しぶりです、サリさん」



あの理月が、躊躇いもなく頭を下げたこと。


現総長に敬われたサリさんは苦笑しながら「やめてよそれ」と理月に頭を上げさせる。