嘘つきお嬢様は、愛を希う




「──ふざけたことしてくれてんじゃねえか」



地の底から響くような殺気を孕んだ声で、一瞬の間にその場の空間ごと凍りづかせた。



「総、長……」



どこかから聞こえてきた震えた天馬の声に、私は咳き込みながら顔を上げる。


風に揺られて凪ぐ黒髪のもとで夜を映した双眸を細めるのは、間違いなく……胡蝶蘭の総長。



「りづき……」



その瞳からはなにも汲み取れなかったけれど、ただ静かに、けれど荒ぶるような怒りを秘めていることだけは伝わってきて、思わず息を呑む。



「なんでここに胡蝶蘭の頭がいるんだよ……!?」


「足止めに放っていたヤツらはどうした!?」



さすがに総長の乱入は予想外だったのか、あからさまに調子を狂わせた相手の男たち。


理月ははっと鼻で笑うように息を吐くと、温度のない瞳で男たちを捉えた。