わかってる。
私と天馬も、心の中ではそうしないといけないということにちゃんと気づいているんだ。
口にしながら小さく息を吐き出して、私は理月の横を通り過ぎた。
迷子の子どもが強がっているような顔をした天馬は、ひとつしか違わないのに私よりずっと幼く思える。
「行くよ、天馬」
「え、ちょっ、総長はいいのかよ?」
「いいの。別にたいした話はしてないから」
それ以上ここで話すことはない、と声音にこめながら、私は早足で廊下を歩いた。
「桐姉!」
視線をかいくぐりながら、一度も立ち止まることなく昇降口を抜け、門を過ぎたところでやっと歩幅を狭める。
「おいっ、姉ちゃん!」
ぐいっと手首をつかまれ立ちどまざるを得なくなった私は、小さく苦笑しながら振り返った。



