「なに弟相手に緊張してんだよ」
「べ、別にそんなんじゃ……」
面倒くさそうに振り返ってくる理月の目には、私の心の内なんて全てお見通しだと書かれているように見えた。
誤魔化そうにも、自分があからさまに動揺していることに気づいているからどうにもならない。
「あのな、チビ」
「っ……?」
「俺はお前ら姉弟になんのしがらみがあるのかは知らねえし、微塵の興味もねえ。ついでに、血ぃ繋がったもんは分かり合えるなんて綺麗事も言わねえよ」
まるで夜を写したような、真正面から見ても何を考えているのか汲み取れない瞳。
そこに映り込んでいたのは迷子のような顔をした、私。
「ただな、ハッキリしやがれ。うだうだ悩む時間があるなら、切るなり焼くなりしてみりゃいい。族の基地に乗り込んでくる度胸があるんだ。それくらい余裕だろ」
「なにそのめちゃくちゃな意見……」
励まされているのか、怒られているのか、はたまた面と向かって悪口を言われているのかよく分からない。
けれどなぜかおかしくなってきて、小さく吹き出す。



