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「え、天馬と?」
「しょうがねえだろ。俺は外せねえ用事があるし、風汰とオネエ野郎は生徒会の仕事があんだよ」
「それは分かったけど……」
やっとのことで帰りのホームルームを終えた矢先だった。
予測していなかった展開が訪れて、さすがの私も戸惑わざるを得ない。
だって当然理月と一緒に帰るのだと思っていたのに、まさかこんなところで弟と二人きりになることになるなんて。
先に連絡を受けていたらしい天馬が、どこか複雑そうな顔で教室の入口に立っているのを見て胸がざわめいた。
きっと天馬も、私と同じ気持ちを抱いているんだろう。
なかなか机から動けない私を見て、理月はため息混じりに立ち上がって先に教室を出ていこうとする。
あわてて追いかけながら、近づいてくる弟に息を呑んだ。



