「まあ深く考えなくていいのよ。櫂さんはもう何年も胡蝶蘭で参謀を担当してる。アタシたちよりもずっとベテランの彼がそう判断したんだから」
「そう、ですよね……」
言葉少なにうなずいて、なぜかもやもやとする胸の内を隠すように無理やり笑ってみせた。
こんなふうに疑り深いのは、私の欠点だ。
欠点だけれど、生きていくのには欠かせない術でもある。
だからこそ、私には『仲間』だとか『味方』は必要ない。
たとえ──血の繋がった弟でも。
「……天馬、これ残りあげる」
「はあ? 全然食べてねぇじゃん」
「なんかお腹いっぱいになっちゃった。朝ごはんも遅かったし」
半ば強引に押し付けて立ち上がると、私は手すりからそっと顔を出して理月の姿を探す。



