話についていけなくなった私はあわてて口を挟む。
「雅さんに彼女さんがいるっていうのはわかりましたけど、私となんの関係があるんですか?」
「うん、あくまで櫂さんにとっては懐かしい状況だってだけ。君と直接的な関係はないよ。ただ突然現れた女の子ってだけでも、あの頃のことを思い出したのかもしれないなってね」
突然現れた──女の子。
確かにその言葉通りかもしれない。
でも、たったそれだけで、あの冷静沈着な櫂さんが私をここへ連れてこようとする?
これほどの組織の参謀を請け負っている人が、わざわざメンバーのプライバシーがより垣間見えてしまう学校なんかに。
なにかが引っかかって、私は言葉を詰まらせる。
「櫂さんに限ってそんな私情絡みで……」
私に高校へ行ってみるか?と訊ねてきた櫂さんは、たしかに少々強引なような気もした。
午後は学校があると言っていたから、私をひとりであそこに置いて行くのは忍びないと思っただけかもしれないし、それ以外の思惑がないとは言いきれない。



