顔をうつむける私を見て、天馬は慌てたようにわたわたし始めるけれど、一方で年長組は冷静だった。
私の隣に腰を下ろし、瀬良さんは「真面目ねぇ」とおかしそうに笑う。
「今回の件は確かにびっくりしたけど、ある意味必然的な事だったのかもしれないわよ」
「……必然的?」
どういうこと?と顔をあげると、風汰先輩は腕を組みながら同意するように頷いた。
「櫂さんにとって、この状況は初めてじゃないだろうからね。桐乃ちゃんはどこかあの人に似てるし」
「ん? あの人って誰っすか、風汰先輩」
「天馬はまだ会ったことなかったっけ? そうだな、雅さんの彼女って言えばわかる?」
ああ!と天馬が合点がいったような顔をした。
「3代目の時に現れた伝説の姫っていう……」
「正確には姫ではないみたいだよ。本人が頑なに否定してるから。でも俺たちの社会では族のトップ──つまりは総長の女のことをそう呼んでるわけだし、まあデタラメでもないね」
「ちょ、ちょっと待ってください!」



