「貸せ、ほら」
「え?」
食べる手を止めた理月は、ぶっきらぼうに私の腕を引っ張って捲り直してくれる。
呆気にとられたのは私だけではなかった。
その場にいたメンバー全員が、信じられないものを見たように目を丸くして理月を凝視する。
「これでいいだろ」
「あ……あの、ありがと」
「いいから早く食べろよ。ノロマ」
この毒舌からはびっくりするほど想像出来ない世話焼きぶり……。
きっと理月は、ただ私がもぞもぞ動いているのが鬱陶しかっただけだろうけど。
「……総長様、はじめての想い……尊いわ」
「成長期なんだよ。理月にとっては」
「いや、そこにいるのホントに総長っすか? 影武者とかじゃありませんよね?」
コソコソ耳打ちする三人に理月は渾身の睥睨を向け、ガタッと立ち上がった。
食べ終わった定食プレートを持ち、無言で階段を降りていく後ろ姿を呆然と見送りながら肩を落とす。



