「足りんのか、それで」
「成長期なんてとっくに終わってるし、これくらいがちょうど良いよ。……あ、これ美味しい」
ふんわりとした厚焼き卵を挟んである少々珍しいタマゴサンドを頬張りながら、私はほっと息をついた。
二階にいるからか、そこまで強い視線は感じない。
やっと解放されたような気がして身体の力を抜くと、背筋が丸くなったからか、ふたたび手の半分がジャージの中に隠れてしまった。
さすがにこれはちょっと食べにくい。
「そういえばそれ理月のでしょ? きりのんにはちょっとオーバーサイズが過ぎるわねぇ。可愛いけど」
机を挟んで向かい側に腰をおろした瀬良さんが困ったような顔でくすりと笑った。
「子供が大人の服着てるみたいで、はたから見てる分には面白いっすけどね」
まったくもって私と同じ感想を口走る天馬。
髪は赤くなっても間違いなく弟だと確信する。
顔も性格も特に似てないのに、こういう部分だけはやたらと似通うのだから姉弟って不思議だ。
サンドイッチをプレートにおいて袖をまくるのに四苦八苦していると、鬱陶しかったのか隣で理月がため息をついた。



