「きりのんってば、疲れた顔してるわねぇ。大丈夫かしら?」
きりのん──?
ああ、そういえばさっきもそう呼んでたっけ。
瀬良さんにはどう扱われても驚かなくなってきた自分に、つくづく人間の適応力の高さを感じながら頷く。
「大丈夫です。ちょっと、慣れないだけで」
「そりゃそうよね。さっき櫂さんから連絡がきて事の次第は聞いたけど、びっくりしちゃったでしょう?」
可哀想に、と頭を撫でられた瞬間、理月からなぜか突き刺すような眼光が飛んできた。
構わずよしよしと手を動かす瀬良さんを不快そうに睨みつけながら、「チビ、お前も早く座れ」と投げやりに言い捨てる。
「チビチビって……」
昨日も思ったけど、理月って瀬良さん嫌いなの?
それとも、やっぱり私のことが嫌いなの?



