「……おかしいでしょ……」



口の中でそう呟いて、私はいつもの何倍もの速さで鼓動を打つ胸をおさえた。


昨日からやけに異常をきたしている心臓。


その原因はなんとなくわかっているけれど、さすがにここまでとなると動揺がおさまらない。


思えば最初は怖いと思ったこの男に、どうしてこんなにもドキドキしているのか。



「──ほんともう、最悪」



心臓に悪いことばっかしてくる理月が悪いんだ。



そう自分に言い聞かせても、元の速さを忘れてしまったらしい心臓は、いつまで経っても収まる気配を見せなかった。