「んなわけあるかっ!」 


「そんなわけないでしょっ!?」



まるで合わせたようにピッタリと声が重なった。


ふたたび顔を見合わせて、お互い不自然な笑みを浮かべながら睨み合った。



「あはは。理月だけはムリだなー、私」


「珍しく気が合うな。俺もテメーだけはお断りだ。誰がこんな可愛げのねぇ女と付き合うかよ」


「っ、誰も付き合って欲しいとか思ってないし!」



顔を合わせれば喧嘩をしているような気がしなくもないけれど、さすがに今のは心外だ。


おそらく同じことを思っているだろう理月と気が済むまで睨み合って、ふん!と顔を背け合う。



「あ、あのう……」



さすがに気まずかったのか、男子たちが私たちを見比べておろおろと視線を行き交わせる。



「ちっ……いいからお前らはこいつに干渉すんじゃねえぞ。断じて俺の女じゃねえが、少なくとも今は胡蝶蘭の管轄下にいる。手ぇ出したらどうなるかわかるだろ」


「はあ……」



生徒たちはそれぞれ何か思うような顔で頷きながら、ちらりと私を盗み見て頬を紅潮させた。


それが何の意味を表すのか考える前に、授業開始のチャイムが鳴る。