「きゃーっ! きりのん可愛い〜っ!」
「ちょ、桐姉なんだよそのカッコは!」
「理月? 一体どういうことか説明してもらおうか」
例のごとく、飛びついてくるなり高揚させた顔で頬づりをかましてきた瀬良さん。
あたふたしながら私の肩を引っ掴んで、上下に揺さぶってくる天馬。
そんなふたりを片手で私から引き剥がしながら、理月へ無言の圧力を浮かべた笑顔を向ける風汰先輩。
相変わらず騒がしいことこの上ない。
けれど、理月以外にも名前と顔を知っている人が現れただけで、どこかほっとした。
理月は理月で、さきほどの倍以上嫌そうな顔で三人を一瞥すると、私を置いたまま足早に離れようとする。
「ちょ、ちょっと理月待ってよ」
同じ教室で授業を受けなければならないのに、理月がいない状態で教室へ入るのはキツい。
「あの、詳しいことはまたあとで」
瀬良さんと天馬は放っておいて、私は風汰先輩に一礼してから駆け足で理月を追いかける。
すれ違った生徒たちはみんな恐ろしいほどこちらを凝視してくるけれど、不思議と敵意は感じなかった。



