「なんか、びっくりすることばっかりです」
「そんなものだろう。族の裏事情なんて、本来なら君は知らなくて良い事だからな」
「まあそうなんですけど……。風汰先輩とか、見た目は迫力あるけど全然族っぽくないのに」
何気なく言ったその一言に、櫂さんは小さく息を吐いた。
「そういう考えはここでは持たない方が懸命だぞ」
「っ……すみません」
風汰先輩が言っていた『ワケあり』という言葉を思い出して、私はあわてて謝る。
そうだよね……。
族の仲間でもない私が安易に口出ししない方がいい。
反省しながらもぐもぐと朝食を口に運んでいると、櫂さんはしばらくこちらを観察した後、なにかを考えるように腕を組んだ。
きっと常に色んなことを考えているんだろうな。
あの頭の中では、たぶんずーっと歯車がすごい勢いで回っているに違いない。
ぼんやりとそう思いながら最後の一口を飲み込んだ私に、櫂さんはメガネを外しながら視線を投げてきた。



