「あっ、ワカ!」



展示場を飛び出す際、深夏の声が聞こえたような気もしたけど、私はそれに構わず走り続けた。



人前で泣くのは嫌だったから、とにかく1人きりになりたかった。



階段を昇りきると、屋上に続くドアが見えた。



こんなとこ、あったんだ?



ドアノブに手をかけたけど、ビクともしなかった。



それでも外に出たくて、ドアノブを揺すった。



「鍵がかかっているので開きませんよ、屋上は立入禁止です。」



その声に振り向くと、階段の下に坂下がいた。



「お願い開けて、1人で思いっきり泣きたい気分なの。」



「ここでも良いでしょう?

今日は皆さん文化祭を楽しんでいることですし、こんなところに来る人は誰もいません。

それに…私が、可愛いワカをこんな淋しいところで1人きりにするわけが無いでしょう?」



階段を昇りきった坂下は私の頭に手を置くと、私のおでこを自分の胸にくっつけた。



縋って、泣いても良いの?