午後の授業をサボったところで完全に直るわけもなく、放課後も私は黙々と手を動かす。



「ごめんなさいね。」



いきなり、部長がポツリと言った。



私ひとりでやらせていることに、罪悪感があるのだろうか。



昨日まで一緒に看板作りしてた先輩たちは、今日は塾があるから帰った。



「気にしないでください、受験の方が大事です。

部長は、帰らなくて良かったんですか?」


「あ、うん。

今日は、サボりたい気分だから。」



そう言いながら、部長も看板直しの手を動かした。



良いのか?受験生。



「それより、さっきの話なんだけど…。」



さっきって、いきなり謝ってきただけだよ?



「桐生さんにステージパフォーマンスやらせたいって、坂下先生に言ったの私なんだ。

坂下先生は少し難色を示したけど、2年から反感喰らうの予想してたのかな。

部はまとまりなくなっちゃったし、桐生さんには嫌な思いさせちゃうし…。」



部長の顔が、曇っていった。



「あっ、あのっ…。

私、坂下先生が贔屓して勝手に決めたと思ってて…。」



うわ、何言ってるんだろ私。



慌てて口を押さえたけど、遅いみたい。



坂下に贔屓して貰ってるなんて、余計なこと言う必要ないじゃん。



「贔屓にされてることくらい、知ってるわよ。

私、和歌と幼なじみだったし。」



じゃあ、私と和歌ちゃんがそっくりだってことも当然知ってるってことか…。



「で、話の続きは?」



「部長が推してくれたんだったら、ステージパフォーマンスやれば良かったなーなんて、ちょっと後悔してみたりして…。」



部長の眉間からシワが消え、その代わりにフワッとした笑顔が広がった。