「そうですね、あなた方の言い分も一理あります。

ならば、公正な判断を下すためにも…。

桐生さんと2年生全員に、選抜のための作品を書いていただきましょうか。

審査は、3年生にお願いします。」



それって、勝負するってことだよね?



私は面倒なことに巻き込まれたくないし、辞退したいんだけど…。



坂下は私のそばまで来ると、囁く。



「辞退したいというなら、選抜後に聞きましょう。」



私が考えてること、見透かされてる…。



周りを見ると、2年の先輩たちが敵意剥き出しで私を睨みつけながら、次期部長と目されてる人にエールを送ってた。



っつーか、坂下に反論してた奴ほど他力本願デスカ?



なんか、オカシクない?



ここで手を抜いたら、私を認めてくれた坂下に申し訳ないよね。



同級生たちが固唾を飲んで見守る中、私は作品に取りかかった。



子供の頃から出来損ないと言われ続けた私には、桐生の名前が穢れようが関係ない。



だから、自分の好きなように書いてきた。



私が人のために書くのは、これが初めて…。



不安を抱えたまま坂下を見ると、私を見て微笑んでくれた。



「あなたなら、大丈夫です。」



そう言ってくれている気がしたから、少し安心して書くことができた。