坂下は床に置きっぱなしだった私のバッグを手にすると、こっちに向かってきた。



「ワカ、隠れるならバッグも持っていかないと、嘘をついたことが分かってしまいますよ。」



「あ…うん、ありがとう。」



怒られると思ってた私は、少し拍子抜けした。



バッグを受け取ると、坂下が椅子を勧めてきたので、そこに腰掛ける。



坂下は私の隣に座ると、口を開いた。



「何故、補習から逃げているのか教えていただけますか?」



古傷を、抉られるのは嫌。



口を噤んだまま俯いていると、坂下が続けて言った。



「あの先生の性格では、このままで済ませることはできませんよ。」



…やっぱり?



「私に話したくなければ、直接…。」



坂下が言い終わらないうちに、私は首を横に振った。